明末中國佛教の研究 212


この表から知られるように智旭の受持した密咒は、およそ八種であり、そのうち『地蔵滅定業真言』・『観音菩薩大悲咒』・『大仏頂首楞厳咒』は、智旭がよく受持していたものである。その目的は様々であるが、共通していることはただ「生善滅悪」を願求することである。いわば現世利益の速急成就を求める方法であり、これについて智旭のいうところは、次の通りである。

有聞佛説而歡喜、生善滅悪入理者、佛卽自説、如楞嚴・尊勝諸咒。皆滅定業也。有聞菩薩詮而歡喜、生善滅悪入理、須菩薩説、如此(地蔵滅定業)咒及大悲等児是也。(宗論三ノ一巻二二頁)

このような智旭の文中に、「卽身成仏」という言葉はみられないが、「生善・滅悪・入理」という思想は、事実上の「卽身成仏」を考えることであると思う。天台宗の六卽の理念をこれに配当していえば、見思惑の悪を滅却して六根清浄の円教十信位の相似卽仏を得ることに通ずるのである。

1 「念仏直指序」に、「念仏三昧、所以名為宝王者、如摩尼珠、普雨一切諸三昧宝、如轉輪王、普統一切諸三昧王、蓋是至円至頓之法門也。」\宗論六ノ四巻九頁

2 『大仏頂首楞厳経文句』巻七参照。\卍続二〇巻三三〇頁D

二 智旭の持咒思想


智旭は菩薩よりあらわれた地蔵咒と観音咒をまず彼の信仰基盤とし、