明末中國佛教の研究 325

智旭の作品の年代推定と彼の思想展開との関係は非常に密切なものがある。今日もっとも年代推定の比較的容易なものは「願文」類の五十七篇で、これはすべて完成されている。最も困難なものは、「法語」類の百六十六篇で、これは全く絶望的である。

また「答問」類の三十篇の中では三篇について年代の推定ができているが、「書柬」類の五十三通のうちでは二十四通、「像賛」類の四十一篇のうちでは僅か一篇である。幸いに「序」類の七十五篇の中の三十六篇が推定されており、「詩偈」類の百六十六篇の中にも六十九篇が推定されている。「願文」類に表われているのは、智旭の仏教信仰とその実践的仏教思想であり、「法語」・「答問」・「書柬」の中に表われているのは、智旭の教学思想である。また「序文」類に表われているものは、著作の年代順次および智旭の賛同を得た当時の流行または新作成の書物と人物であり、「像賛」類に表われているのは智旭が私淑と敬意または崇拝も示した仏・菩薩・羅漢・高僧・緇素の道友などの名・号・功徳とその景行偉業である。さらに、「詩偈」類に表われているのは、智旭の生活情趣とその生活背景である。

ゆえに智旭の仏教生活である信仰行為の段階的分析については、はっきりしているが、教学思想について年令順次を分期することはやや困難であるといえる。しかしながら、三十八巻に達する『宗論』は、実に智旭の思想全体の綜合編と言い得るから、もし『宗論』を精密に研究するならば、たとえ彼の現存する五十種のいわゆる『釈論』を読まなくても、智旭の人となりおよびその思想に対してはある程度の理解ができるであろう。

二十八文類の数量と年代推定の比率


分析研究のために、『宗論』二十八類のそれぞれについて、篇数とその中で年代推定のできる篇数の比率を表にして挙げて見よう。