明末中國佛教の研究 142


現代の中国に行われている十三社説の順位は、慧遠・善導・承遠・法照・少康・延寿・省常・宗賾・祩宏・智旭・省菴・際醒・印光であり、事実上、智敀­は第十祖となっている。ここで仮に『仏祖統紀』並びに『生無生論註』と『九祖伝略』に従って「宗賾」を省略するならば、智旭はすなわち第九祖となるであろう。しかしながら、智旭の「儒釈宗伝竊議」によると、浄土教における祖師は、これと相当異なっている。すなわち、慧遠・智顗・知礼・遵式・飛錫・唯則・梵琦・妙叶・伝燈・祩宏・徳清など十二人であり、これは思想と著作を焦点として選出したものと考えられる。したがって、真に智旭の浄土思想を慕う人であるならぼ、智旭を第九祖に置くことは実に不当なことといえるであろう。弘一演音は『霊峰宗論』を研鎖し、かつ智旭の念仏思想に敬意を払っていた人であったが、この点については、多分、配慮が及ぼなかったのであろう。

1 宗論巻首一~四頁

2 宗論巻首五~七頁

3 卍続三五巻一五一頁B─一五二頁B

4 胡挺編『浄土聖賢録続編』巻二の彭希涑条。\卍統一三五巻二 〇七頁C─二〇八頁A

5 宗論一二巻二~三頁

6 宗論四ノ一巻一〇頁─一二頁

7 宗論四ノ一巻一二―一四頁

8 『新続高僧伝四集』とは、衡陽喩諭昧菴居士が一九一八年から一九二三年の五年間の歳月を費して作成した凡そ六十五巻のものであるが、その内容を検討してみると、稍々、信頼できない点がある。