明末中國佛教の研究 234

『出三蔵記集』巻十一にある『菩薩波羅提木叉後記』にいう「唯菩薩十戒四十八 軽、最後誦出」のことを誤伝したもので(大正五五巻七九頁BIC)、実際は現存の『梵網経』は、決して羅什訳ではない。けれども羅什の訳出したものを吸収しているとはいえるであろう。

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四 智旭における燃臂と燃頂


『梵網経』の焼身および捨身思想の根源ほ、『法華経』と『金光明経』であり、智旭のこれに関する信仰行為は、むしろ『梵網経』と『楞厳経』を中心とするものである。もし『梵網』と『楞厳』の二経が中国で成立したいわゆる疑偽経であるならば、智旭の信仰は完全な中国仏教の実践であるといえるであろう。そして、智旭に燃臂と燃頂の信仰行為を齎らす結果となったことも、すこしも不自然でほないと思う。

ここでまず智旭の燃臂と燃頂の事実に関する記載を、図表とする。
年令燃頂燃臂燃香本数燃香理由資料根拠
26歳寄母親書。宗論五ノ一巻一頁
30歳12為発十二願。宗論一ノ一巻六頁
31歳5為持滅定業真言等。宗論一ノ一巻八頁
3為璧如廣鎬作証明。
7為母親棄世三週年。宗論一ノ一巻九頁
10供養観音大士。宗論一ノ一巻一二頁
3第三次閲律蔵畢。宗論一ノ一巻一三頁
3代同学某等供養三宝。
32歳刺舌血致惺谷書。宗論六ノ一巻五頁
28懺摩発願。宗論一ノ一巻一五頁
25供養本師釈尊。
6持滅定業真言。宗論一ノ一巻二〇頁
7為十一道友持滅定業真言。
3供養善友知識、啟請広運慈悲、同垂済抜。宗論一ノ一巻一八頁
34歳4発弘願誓、断悪修善。宗論一ノ二巻一頁
3慚愧尅責、持大悲咒。宗論一ノ二巻二頁
3以至誠心、深心、廻向心、専持往生咒。宗論一ノ二巻二頁
3礼大悲懺、供大悲三宝。宗論一ノ二巻三頁
5礼大悲懺建壇日。宗論一ノ二巻八頁
21礼大悲円満日 。