第六節 智旭における悟境の変遷と浄土信仰
一 信仰行為の年代的特質
さきに述べた如く智旭における信仰生活を分析すれば、
- 卜筮――二十一~四十六歳(一六一九ー一六四二)
- 血書――二十六~三十二歳(一六二四ー一六三〇)
- 贖罪――二十六~三十九歳 (一六二四ー一六三七)
- 持咒――三十一~三十九歳(一六二九ー一六三七)
- 礼懺――三十三~四十八歳(一六三一ー一六四六)
- 燃香――二十六~五十六歳(一六二四ー一六五四)
の六つに区分されると思う。これをみてわかるのは、血書の期間が一番短く、持咒と贖罪は同じく三十九歳までで終るが、発生の年代からすれば、贖罪信仰がより前から行なわれたものであり、ト筮信仰は彼が比丘戒の清浄輪相を得ると同時に終っている。また、礼懺信仰は彼の第四期浄土行(1)に入ったと同時に終り、最も長期に渉る信仰行為は燃香であり、二十六歳に菩薩戒を受持してから命終の最後まで、この燃香の苦行をつづけていた。この事実は、正に智旭の仏教信仰において指導原則になるのは、『梵網経』および『楞厳経』であることを示すものというべきであろう。