明末中國佛教の研究 364

智旭は二十五歳の夏すでに性相二宗の互通互融の理念を徹悟したが、その理論根拠としては、この二種の観法と接触して、始めて相宗の唯識説と性宗の唯心説を統一したことにある。『占察経』の唯心識観を相宗の唯識思想に、また真如実観を性宗の唯心思想に配置して、いわゆる性相融会論を鼓吹する依拠となったのである。これについて智旭は、彼の「教観要旨答問十三則」の第一答問の中に、次の見解を語っている。

唯心是性宗義、依此立真如實観。唯識是相宗義、依此立唯心識観。料簡二観、須尋占察行法。(宗論三ノ三巻一二頁)

これは「三界唯心」の如来蔵思想(4)および「三界唯識」の阿頼耶識思想(5)という点で、如来蔵系の性宗説と阿頼耶識系の相宗説を差別融通するという見解から論述したものである。この二種観法の実践方法は、彼が三十五歳のときに編述した『占察経行法』という書があるので、それを読んでほしいというのである。

なお智旭は「刻占察行法助縁疏」の中で、釈尊の一代時教において、『占察経』が極めて崇高な位置にあると称讃している。すなわち、

此二卷経、已収括一代時教之大綱、提挈性相禪宗之要領、曲盡佛祖為人之婆心矣。(宗論七ノ三巻一三頁)

と。この『占察経』(6)は二巻だけであるが、その内容としては釈尊が説かれたあらゆる教義の大綱になっており、さらに性宗・相宗・禅宗の要領を明示しており、真に仏祖が人の為に老婆心を尽した偉大な経典であるというのである。その唯心識観は相宗の理論に等しく、真如実観は性宗の理論に等しい。インドの大乗仏教としては、中観学派の唯心論と瑜伽学派の唯識論、いわゆる空と有の二大主流がある。中国の仏教学としては、この唯識と唯心の相性二流以外に、また禅宗がある。厳密にいえば、禅宗も唯心系統のものであるが、智旭の仏教分類法によると、