明末中國佛教の研究 367

〇一頁C

7 「法海観瀾自序」参照。\宗論六ノ四巻二三ー二六頁

8 永明延寿の拈鬮については、①『宋高僧伝』巻二十八の延寿伝(大正五〇巻八八七頁AーB)と②『景徳伝燈録』巻二十六の延寿条〈大正五一巻四二一頁Cー四二二頁A)には共に記載していない。けれどものちにできた③『釈門正統』巻八(卍続一三〇巻四四九頁D)及び④『仏祖統紀』巻二十六(大正四九巻二六四頁C)の延寿伝記には、拈鬮のことを明記している。

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10 「較定宗鏡録跋四則」参照。\宗論七ノ二巻一五頁

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二 現前一念心説

現前一念心説の根源


この段階において、智旭の著作の中には、彼独特な哲学思想の現前一念心という理念が、始めてあらわれていることが指摘できる。この語句は勿論智旭が自ら創造したものであるが、その思想発生の源流を探究してみると、次の五つの資料を挙げることができると思われる。

以上の五つの資料を考察すると、智旭における「現前一念心」説の根源は、その概要が理解されるであろう。「現前」の二字は、『摩訶止観』の「介爾」の二字と似ているが、やや違っており、これは『楞厳経』から採択したものである。「一念心」の三字は、『摩訶止観』の「此三千在一念心」(1)という説と相違はしていないが、